ふじみ野通信

ふじみ野通信10 2010年の暮れ

1.日本企業の海外進出
 2008年のリーマンショック以来、ただひたすら経済混乱に絶える以外なかったような日本企業は、年余をおかず動き出して、中国・東南アジアに向けて進出しだしたように思われる。今年の暮れは少なくとも上場企業においては、少数の例外を除いては好況に恵まれ、今後の展望も中国・アジアにむけて開かれた様である。

 年末の各業界のボーナス回答率を見ると、其れもうかがわれるようである。

 前年比で見ると、製造業で2.3%のプラス、非製造業でマイナス1.23%の伸びである。二桁の伸びを記録しているのが、繊維、精密機械、倉庫・運輸。5%以上が化学、ゴム、機械、電機、自動車・部品、水産、ホテル・旅行、情報・ソフト。もちろん日本の成長率が数%であることは、全体にも影響を及ぼしている。例えば、鉄鋼は26%の減少、レジャー・マスコミ関連が10%の減少である。その他業種で減少の目立つのは、国内需要依存型の産業で、百貨店・スーパー、その他の小売業、鉄道・バス、陸運、外食産業等である。総じていえば、海外進出におくれた業種、或いは内需型の業種がマイナス、その他は大小の差はあるが前年を上回る結果になっている。

 今年の海外進出というのは、もちろん欧米ではない。

 最近の中国の発表によると、中国への進出している日本企業は2万6千社に及ぶという。しかも、進出企業アンケートによると今中国で進んでいる賃上げ等の問題を考えても70%は、今後にそれ以上の成長を期待している。売上は150%と高い伸びを示しているが、収益率の低いインドにも1,000社を越える企業進出がみられるという。タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポール等の東南アジアはもちろん、パキスタン、バングラデッシュ等の南アジア諸国、これから成長の期待されるカザフスタン・キルギスタン・トルクメニスタン等の北東アジアへの進出も良く聞かれるところである。
 
 しかしながら、このアジア進出は国内の輸出とか、内需に結びついているわけではないようである。アジア諸国で生産して生産国内需をみたし更に外国へ輸出するという構図で、この好況は今まで味わったことのないほど、日本の国内景気とは関わりが薄い。日本国に住んでいる我々には、この好況はピンとこない。つまり、現在好況は、それらの会社が内需には最早期待できない状況から、リーマンショック以降に活性化したアジアへ、アジアへと進出していって得た成果なのである。

2.リーマンショック後の世界経済
 国際取引所連盟(WFE)の調べによると、リーマンショックのおこる前、2007年暮れの世界の株式の時価総額は約58兆ドル。それがリーマンショックの伝えられた2008年9月には33兆ドル、底値になった2008年の暮れには29兆ドルまで下がったのである。58兆ドルから29兆ドルまで、株式時価総額が半減するのに2008年の約1年しかかからなかった訳である。

 株式の時価総額は、そのまま経済活動の規模の縮小を意味していたことは体験的に容易に想像できるが、世界規模となった場合の詳細は不明である。株式の時価が経済の流動性そのものとイコールであるという事は出来ないであろうが、経済活動が一時的にしろ停滞するほどの衝撃であった事はまちがいない。その時、下がりつづける株価を見て投資家はどのように次の「世界」を考えたのであろうか。

 少なくとも、投資すべき先がアメリカやヨーロッパではなくなった、有効な投資先はアジアや中南米の発展途上国に移ったのではないか、と考えたのではなかったろうか。我々が報道される企業の決算情報から見る限りでは、2009年は製造業に受注が集まり始めているが、それが一時的なものか、長期的な一つの流れになるものか、判断できかねるうちに生産拡大にはいっていったような印象を受けるのである。2009年は、上海や香港、ムンバイ等のアジアの株式市場が盛況を来していたが、日本の株式市場はそれに連動していないし、日本企業は何か及び腰に求められる需要に対応していたように思われるのである。

 もちろん、リーマンショックからの回復には日本もアメリカもヨーロッパも、国の財政を出動させて経済活動の促進をはかったのであったが、それでもアメリカやヨーロッパの経済不安はなかなか去らない。アメリカはAIGを救済して史上かつてないほどの金融緩和をしたし、ついにはFRBが2011年までに6,000億ドルの米国債を買い上げると言うありさまで来ている。日本も、一時は東京三菱銀行を除いて全銀行が国有化しかねないほどの公的資金を金融機関にいれているし、日銀の政策金利が零%という事態である。また、EUはギリシャやアイルランドでおこった財政危機の不安を未だに払拭しきれてない状態である。

 しかし、世界の株式の時価総額は2009年の1月を底に徐々に回復して、2010年の10月時点では遂に52兆ドルまで回復している。日本の株価もようやく1万円を上下するようになったし、アメリカの株式も1万ドルを越えるようになっているが、問題はその中身がどうなっているかである。先進国の株式市場の成長率よりも、はるかに途上国の株式市場の成長率のほうが高い筈であるから、52兆ドルの中身は大きく変わっているのではないかと思われるのである。そうなれば、当然企業のグローバル化は更に進まざるをえない。

 しかも今日の世界の流動性は明らかに過剰である。IMFの推計によると、2000年を100としたときの世界の経済成長は約190で二倍にも達していないが、ドルの流通量は3.5倍を超えている。これはそのまま発展途上国のインフレ要因になり得る。

 中国やインド等は、インフレリスクを放置できずに利上げに動き始めたが、利上げは更に投機マネーを呼び込み、自国の通貨高に進みかねない。輸出企業の競争力を保つためにドル買いの介入を増やすと、金融市場に自国通貨をバラマキ経済を過度に刺激してしまうと言うジレンマもある。このジレンマを解消しようとして、例えばタイやブラジル等のように資本規制すれば、何時投機マネーの反転が起こって自国の通貨危機がこないとも限らないと言う不安要素が生まれる、というわけである。

3.「世界経済の骨格」について
 例えば、リーマンショック後の日本経済の立ち直りには財政の力もあったであろうが、何よりもリーマンショック後に生じた発展途上国需要に答えられる生産技術と生産力を日本の企業がもっていた事が何より大きな要因だったのではないだろうか。そう考えると、何となく腑に落ちる。企業はそうではないかもしれないが、人も国も先進国の例を見るまでもなく、限りなく富と豊かさを求めるものだとは思えない。その国の文化と国土の広さと、民族にまつわる習俗と生涯にわたるささえを与える国、社会であれば人々は満足するのではないだろうか。

 もともと各国の経済の規模や厚みには、歴史的な事情が影響している。高い国民所得を得ている国は、第一に国民の数が多くなければならないであろう。少ない数の国民が何処よりも大きい経済規模を持つのは、いずれ平準化されざるをえない逃れ歴史である。余所の国の事をいいたくはないが、ヨーロッパの個人所得の高い小国は、それなりの寂しい事情があると言えるであろう。

 世界で、もっとも大きな国土をもっている国はロシアかもしれない。しかし、ロシアは広い不毛のタイガーやツンドラをもっている。たまたまそこから石油や鉱物資源がでてきたところで、巨大な富を国民にもたらす事は出来ない。多分、国としては、その資源をあきないながら暮らしていくしかないであろうからである。

 今、我々が考えなければならないのは、この地球上で限りなくに近いほど人口は増えつづけていくであろうという事である。その時、途上国もアフリカも含めてどのようにするか、どのように考えるべきであろうかという事である。人口でいえば中国である。インドであるが、地球の問題としては人口密度であろう。
 
 例えば、バングラデッシュにどうして1平方キロに1,126人も一人当たり470ドルの国民所得で16,000万人も集まって住んでいなければならないのだろうか。アメリカは32.6人が一人当たり46,000ドルの所得で32,000万人も集まって住んでいる。オーストラリアは2.7人が35,750ドルの所得で2,200万人が集まって住んでいる。ちなみに日本は336.4人が一人当たり37,790ドルの所得で12,750万人が集まって住んでいる。

 これは、一体どう考えるべき問題なのであろうか。

2010.12.27 田沼

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by esapp | 2010-12-27 17:40